喜びも悲しみも幾歳月(映画)

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1957年公開という、50年も前の映画の話。(木下恵介監督)

この映画、佐田啓二 (中井貴一のお父上)と高峰秀子主演で、当時相当に好評を博したようで、その後テレビドラマ化されること3シリーズ、さらには主演を加藤剛と大原麗子で「新:喜びも悲しみも幾歳月(1986)」というリメイク版が作られたほど有名な映画です。

なんでそれをここでご紹介するかというと、これはまぎれもない「灯台映画」であるからです。もちろん、灯台はあくまでもモチーフで、人生をテーマにした深い映画なのですが、戦前から戦後にかけて日本各地の灯台を守った灯台守の人たちの記録映画であるというような見方もできます。

なにしろ、主人公の生活の舞台として登場してくる灯台だけでも、観音崎灯台(神奈川)、石狩灯台(北海道)、女島灯台(長崎沖)、弾崎灯台(佐渡島)、御前崎灯台(静岡)、安乗崎灯台(三重)、男木島灯台(香川)、最後にもう1度御前崎灯台。

ワンショットだけ登場してくる灯台も含めると、大島、水子島(豊後水道沖)、金華山、塩屋崎、尻屋崎、犬吠埼、綾里崎。

原作は、「田中きよ」さんという、灯台守のご主人を持つ方が、1956年に「婦人倶楽部」という雑誌に発表した『海を守る夫とともに二十年』という手記だそうで、描写がリアルなのもうなずけます。(映画の、灯台守夫人の「きよ子」は、田中きよさんを示しているそうです)

で、見終わっての感想なのですが、灯台守の厳しい生活をリアルに描写した、一見、生活感あふれるシーンが多いにもかかわらず、全体に奇妙な透明感が漂っています。全てが身近な日本の出来事では無いような、さらにはこの世の出来事では無いような印象が強いのです。

灯台を守る、というのは、工場を守るというような人為のなせる業ではなく、まるで海の神様を祀る祠を守っているような錯覚に陥ってしまいました。

ストーリーそのものは、現代の感覚からするとやや抑制が効きすぎている感もありますが、そのことがなお一層、モチーフである灯台を際立たせているようです。一度ご覧あれ。

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