新・喜びも悲しみも幾歳月(映画)

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1986年の松竹映画、監督は前作と同じ木下恵介。主演は加藤剛と大原麗子。

前作が、生活感あふれるシーンが多いにもかかわらず全体にどことなく透明感が漂っていたのに対し、本作はリアルな現実感がある。

もちろんこれは前作の時代背景が戦前・戦中・戦後であり、現代人からすると別の世界の出来事であるかのような錯覚に陥るからであろうが、もうひとつ、登場する灯台の景色が左右している部分も大きいと思う。

前作では、石狩灯台とか女島灯台など、そこで生きていくこと自体がすでに大きな試練であるかのような灯台が強烈な印象を残した。過酷な生活に耐え切れずに亡くなってしまう婦人、戦争中に標的とされた灯台で殉職した人たちなど、「死」というモチーフもそこかしこに登場してくる。

しかし本作では、石廊崎、八丈島など、全体に明るいイメージの灯台が多いのだ。大原麗子の演じる「おしゃべりで明るい奥さん」もそのイメージを増幅している。大ざっぱにまとめると、本作は、前作ほどの厳しさは無く、「ちょっとしんみりするホームドラマ」ということになるのかもしれない。

ただ、灯台好きな人にとっては興味が尽きないシーンが多い。

石廊崎で加藤剛がデスクに向かって放送する灯台放送。「各局、各局、各局、こちらは、いろう、いろう、いろう。海上保安庁が、石廊崎灯台の、気象状況をお知らせします」という、聞き慣れた?フレーズが映画に登場してくるというのもちょっと嬉しい。

今でこそ大阪ハーバーレーダー以外は全て合成音声になっているが、昔は各灯台から、映画に出てきたような、こじんまりした放送施設を使って手作り放送していたのだろうなと思うと感慨深い。

また、豊後水道沖の孤島に聳える水の子島灯台。前作では遠景だけが登場し、船からそれを眺めるきよ子(高峰秀子)が夫(佐田啓二)から、「あんな灯台(に赴任するというのは)どうだ?」と問われて「ぞっとするわ」と答えていたが、本作では実際に水の子島灯台で仕事をしている男たちのシーンも登場する。

それ以外にも数多くの灯台が登場するが、前作で登場した灯台とほとんど重なっていないというのも色々と新しい発見ができて面白い。

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